結局とられるの??企業型DCにかかる税金とは?

企業型DCとは

はじめに

 前回は企業型DCの概要をお伝えしました。今回は企業型DCの受け取り時にかかる税金についてお伝えします。拠出時は非課税、運用益も非課税とか散々良いこと言っていたのに、なんだかんだで結局最後に税金取られるの?と思うかもしれませんが、税制面で優遇されていますのでご安心ください。(⇒これがなかったら確定拠出年金はやる意味がほぼ有りません。)

 企業型DCの受け取り時に発生する税金は、公的年金等控除(年金として受け取る場合)、退職所得控除(一時金として受け取る場合)、を受けることができます。(iDeCoも同様)

税優遇制度

公的年金等控除(年金として受け取る場合)

 65歳以上の場合、年金収入330万円以下であれば、110万円まで所得から控除することができます。控除されて残った金額は総合課税として雑所得となり、更に基礎控除や社会保険控除をして所得税を計算します。

 年金として受け取る場合、支払いの都度、給付金支払い手数料として440円/回が発生します。(最近は無料化の流れあり)口座管理手数料、ファンドへの信託報酬の支払いは継続します。

 また、年金収入が増加するため、DC年金部分に対する課税が増えやすくなるうえ、後期高齢者医療保険料や介護保険料が上がる場合があります。

退職所得控除(一時金として受け取る場合)

 企業型DCやiDeCoを一時金で受け取ると、原則として退職所得扱いになります。退職所得は以下の計算式で求めます。

退職所得=(退職金収入 − 退職所得控除額) × 1/2

 上記数式の中の、退職金収入は運用益ではなく一時金総額になります。退職所得控除額は以下の計算式で求めます

勤続20年以下の場合

退職所得控除額=40万円 × 勤続年数

但し、最低控除額80万円

勤続20年を超える場合

退職所得控除額=40万円×20年+(70万円×(勤続年数-20年))

退職所得控除額は勤続年数が長いほど大きくなります。(特に20年を超えると40万円/年⇒70万円/年)


 退職所得への課税は分離課税となり、所得税(特別復興所得税含む)、住民税が課せられます。社会保険料は発生しません。退職所得控除と1/2課税という非常に大きな優遇制度があるため、退職金収入がある方は、一時金として受け取るほうが税金面で有利になるケースが多いです。細かい話ですが、一時金で受け取ってしまえば、受取手数料(440円/回)も1回で済みますし、口座管理手数料や信託報酬の支払いも完了します。

応用編

 確定拠出年金(企業型DC、iDeCo)と退職金両方あるという方もいらっしゃると思います。また、確定拠出年金を企業型DCとiDeCoで併用している方もいらっしゃると思います。その場合の優遇制度の適用についてお伝えします。

 以下、【iDeCo】と【企業型DC】の場合で話を進めます。【】の中を適宜【退職金】と置き換えて確認してみてください。

退職金所得控除の確認期間(俗にいう10年ルールと19年ルール)

10年ルール

 iDeCoを先に取り崩し、その後、企業型DCを取り崩すとします。その間の期間が10年以上である場合、それぞれの退職金所得控除はフルに利用することができます。

19年ルール

 10年ルールの逆で、企業型DCを先に取り崩し、その後、iDeCoを取り崩す場合はその間の期間が19年以上である場合、それぞれの退職金所得控除はフルに利用することができます。

 これらルールにいては、勤続期間やiDeCo加入期間の重複期間における控除の二重取りを防止するために設定されているルールです。以下ケーススタディで見てみましょう。

ケーススタディ.(iDeCo:1000万円、企業型DC:2000万円)

ケース1.60歳 iDeCo1000万円(加入期間20年)取り崩し、70歳 企業型DC2000万円(加入期間40年)を取り崩した場合

10年のルール適用のパターン

iDeCoの退職金所得控除額=40万円×20年=800万円

退職所得=(1000万円-800万円)×1/2=100万円⇒所得税、住民税算出

企業型DCの退職所得控除額=40万円×20年+(70万円×(40年-20年)=2200万円

退職所得=(2000万円-2200万円)×1/2<0⇒所得税、住民税無し

ケース2.60歳 iDeCo1000万円(加入期間20年)取り崩し、65歳 企業型DC2000万円(加入期間40年)を取り崩した場合

iDeCoの退職金所得控除額=40万円×20年=800万円 -①

退職所得=(1000万円-800万円)×1/2=100万円⇒所得税、住民税発生 

企業型DCの退職所得控除額=40万円×20年+(70万円×(40年-20年)=2200万円

重複期間分の控除を除く退職所得控除額=2200万円-800万円(①)=1400万円-②

退職所得=(2000万円-1400万円(②))×1/2=300万円⇒所得税、住民税発生

ケース3.60歳 企業型DC2000万円(加入期間40年)取り崩し、65歳 iDeCo1000万円(加入期間20年)取り崩した場合

企業型DCの退職所得控除=40万円×20年+(70万円×(40年-20年)=2200万円

退職所得=(2000万円-2200万円)×1/2<0⇒所得税、住民税無し

iDeCoの退職所得控除=40万円×20年=800万円

但し、重複期間分の控除を除く退職所得控除額⇒企業型DCを取り崩してからiDeCoを取り崩すまでの期間⇒5年間

5年分の退職所得控除額=40万円×5年=200万円-③

※最低80万円とする。

退職所得=(1000万円-200万円)×1/2=400万円⇒所得税、住民税発生

ケースの比較結果

退職所得の合計値は、

ケース1<ケース2=ケース3となりました。

 10年ルールを適用するのが最も有利でしたが、それ以外の場合はどちらを先に取り崩すかはケースバイケースであると思われるため、モデルに基づいてその都度シミュレーションをすることが大切そうです。

 また、今回の試算は、運用益等のパラメータが未考慮なので、その時点、時点で条件を変えて試算をすることが必要です。あくまで今回ケースの試算として参考程度でご認識ください。

おわりに

 今回は、企業型DCを取り崩す際にかかる退職所得の算出方法の考え方をお伝えしました。

 と、お伝えしたところでですが、5年ルールから10年ルールへの改定(2025年)など、政府の後出しじゃんけんのような制度変更がしれっと行われています。確定拠出年金は60歳まで解約もできないのため、制度の改悪が行われた場合、真正面から受け入れざるを得ない状況になります。

 聞こえてくるだけでも、退職所得控除の計算式の変更検討(20年を超える控除額70万を40万に下げる)とか、退職所得の×1/2の変更等が検討されているとのことです。

※退職所得控除の計算式の変更は、現行の計算式だと、1つの会社で長年勤めることで有利になることから、職業の流動性(転職)を阻害するということで変更が検討されいているそうです。国のやることはズレているとしか思えません。。。

 あと、確定拠出年金に関係する特別法人税(年率1.173%の資産課税)が現在凍結状態になっていますが、これが復活するとさらに利益が減ります。(運用益ではなく資産に課税されるので、運用損がでていても課税されます。)

 今後も10年、20年と税制改定がされていくのは、想像できるので、その都度、最適解を探っていく必要があります。

 今回は現時点での税制の内容でシミュレーションしてみました。参考にしていただき、現時点の企業型DCの出口戦略の一助にしていただければと思います。

 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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